eGenjiko:インタラクティブな香炉を用いた
香道体験システム
概要
日本の伝統芸道の代表の一つに香道がある。香道は、香木や香炉などの専用の香道具を用いて、香炉で焚いた香木の香りを嗜む芸道である。茶道や華道と比較すると香道の認知度は極めて低く、香道経験者が少ないのが現状である。香道の認知度が低い理由として、香道で用いる香木は金より高価であり、手軽に体験出来ないことが挙げられる。本研究では、コンピュータ制御可能な香炉と解答用紙に見立てたタブレットを用いて、香道の遊び方の一つである「源氏香」を体験可能となる香道体験システムeGenjiko (いーげんじこう)を提案・実装した。eGenjikoにより、時や場所を選ばず、初心者でも手軽かつ安価に香道体験が可能になる。
システム構成
本システムの香炉は、3Dプリンタを用いて出力した香炉型ケース、市販のアロマディフューザ(Aromasic)によって構成され、香炉型ケースの中央に香り噴出ボタンを配置した。回転台は、3Dプリンタを用いて出力し、回転台内にステッピングモータ、ステッピングモータの回転制御するためのマイコン(Arduino)、サーバPCを設置した。香り提示のために使用したAromasticは,5種類の香りが提示可能なカートリッジ・電源・香り噴出ボタンを有している。ユーザがAromastic本体上部にあるダイヤルを回転させて、任意の1種類の香りを選択し、香り噴出ボタンを押下して香りを楽しむことができる。


使用手順
- 香炉を回転台に設置:プレイヤーは、香炉を回転台に設置し、タブレット端末に表示されたアプリケーション内のスタートボタンを押下する。回転台は香炉内のAromasticの下部を回転させて、5種類の香りのいずれかをランダムに選択する。
- 回転台から香炉を取得:プレイヤーは、香炉を回転台から取り外し、香炉を把持していない方の手を香炉の底に添えながら香炉を持つ。
- 香を聞く:プレイヤーは、香炉の香り噴出ボタンを押下し、選択された香りを聞く。1・2番の手順を5回繰り返した後、プレイヤーは5つの香りの異同を解答する準備が整った状態になる。
- タブレット端末に回答:タブレット端末に「源氏香の図」の解答ページとして、5本の縦線(最右が1番目の香り,最左が5番目の香りを示す)のみが表示される。プレイヤーは同香と思われる番号に相当する縦線の上部を、横線で繋いで答えを入力する。
発表文献
- Anna Yokokubo, Yasushi Matoba, Miku Ohno, Mudmee Chaichirawiwat, Guillaume Lopez, Itiro Siio: eGenjiko: Scent Matching Game using a Computer-Controlled Censer, Extended Abstracts of the Annual Symposium on Computer-Human Interaction in Play (CHI PLAY '19), pp.789-795 (2019).